太田出版 (2002/04)
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管理人レビュー
これほどまでに作者の心情が投影されたマンガは他にないだろう!
今回は華倫変の作品の中でも特に面白かったダウナーな不条理マンガ「カリクラ」を取り上げる
基本的にオツムの弱いカワイイ女が、オツムの弱い男に嫌な目に遭わされるといったひどく陰鬱な話を毎回同じような展開でこなしていく

ネームをほとんどそのまま載せて、自身は雑誌に載ったものを読み返さない
カメラワークが独特で、バストアップ&正面目線といった構図を多く使うためか、その世界に入り込みやすい
「ナニワ金融堂」などもそういった構図を良く使うが、どちらかといえば「美少女ゲーム」感覚のほうが近い
マンガを通してアウトサイダー・アートを表現しているとさは作者の弁
一般的には「死、ダーク、エロス、背徳」といった属性があるといわれている
このマンガは読む人にとっては「これは文学マンガだ!」という人もいるだろう
今の段階で、当時の作品を思い返すと、なんだかニヒリズムとテロリズムとアナーキズムへの憧れ、屈託と諦めと開き直りと、宗教的な(おおげさだけど)極限のパラダイム崩壊と、自身の変革を願いながら何ももできないため息をついていたように思い、すべて自嘲であった気がする。
(上巻:作者あとがきより)
作者はうつ病などを煩わせていたため、自殺で亡くなったのではという噂が立っている
(公式には死因:心不全とされている)
自殺と公式に発表されていたら社会的な話題として作者のマンガ普及にはなるが、そのマンガの読み方が変わってしまう問題がある
極端な話『自殺した漫画家が描いたマンガ』というランク付けをされ、どんなにすばらしい作品であってもそのマンガが『作者自殺で完結したマンガ』と見なされるからだ
(ねこぢるなどは非常にその色が強い)
ただもし自殺で亡くなったのなら、作者のこれほどまでに人間を嫌い、現実を嫌い、世界を嫌う精神は最後まで貫いてほしかった
華倫変のマンガにはある種のカタルシスを感じ、マンガを描く構え方はロックである故、ガツガツとした商業主義的な漫画家では無く個人的には非常に好感が持てる
話の最後にはほとんどが「こんな非日常的な経験をしたけど、結局私は何も変わらなかった」といったある意味自嘲的なテーゼを通している
ただ、ひとつだけいいたいのは今までバッドエンドを描いたことはないということだ。
(下巻;作者あとがきより)
作者はバッドエンドを書いていないというが、ハッピーエンドも書いてないし、そもそもエンド(=オチ)になっていないように思える
書き手が「終わり」や「END」と書けばそれは作品の終わりとなるのだが、なにかずるい気がしないでもない
「短編マンガには毎回オチが無いとつまらない!」と考える方や、「萌えは好きだが、露骨な萌え(=ポルノ)は嫌い」といった考えを持つ人には向いていないかもしれない

個人的には登場キャラクターの女の子がみんなかわいく、ご都合主義的なストーリーがエロゲーチックに感じる
(直接的なエロ描写は少ないですが)
美少女ゲーム好きな人やガロ好きな人におススメのマンガです
2003年3月19日、心不全のため28歳の若さで逝去
桃山大学出身、サークルは出版会
太田出版の復刊版『カリクラ』には多重人格の話が未掲載
単行本未収録作品はヤングサンデーで賞を受賞した「ペントベルビタ?ル酸」、ヤンサンデビュー作の「南京錠」
(復刊リクエスト中)